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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)250号 判決 1953年7月03日

主文

原判決中第一審判決添附目録第五の土地につき上告人の請求を棄却した部分及び訴訟費用の負担に関する部分を破棄し、札幌高等裁判所に差戻す。

その余の部分に対する上告を棄却する。

理由

原判決は別紙目録記載第五の土地について。「第五の土地は従前訴外小西治三郎が小作していたところ、昭和二一年三月中被控訴人上田信之が同人から右土地の返還を受けた事実は原審及び当審証人小西治三郎の証言によつて認められ、その後引続いて同被控訴人が右土地を耕作しており控訴人はまだその引渡を受けていない事実は控訴人の主張自体で明らかである」と判示しこの事実に基いて、右土地の売買を無効と判断したことは原判文上明らかである。

しかしながら、記録にあらわれた原審口頭弁論の結果によれば、上告人は原審において、「別紙目録記載第五の土地は売買契約当時訴外小西某が被告(被上告人)等の小作をしていたが昭和二〇年九月中被告(被上告人)信之が自家田として耕作したいから二一年度だけ作らせて呉れというので原告(上告人)はこれを承認したところその後被告は約旨に反し昭和二二年度以降にも原告に引渡しない」と主張したこと明らかであつて、右主張によれば、上告人は本件土地の売買の当時、売主たる被上告人と買主たる上告人との間に、昭和二一年度だけは被上告人が右土地を上告人から借受けて耕作することとし、同年以後はこれを上告人に返還する旨の契約が成立したというのであるから、右主張の中には、その際、両者間に本件土地については「占有の改定」等による土地の引渡があつたとの主張を包含するものとも解せられないことはないのであつて、少くとも上告人においてその際何等の引渡をも受けなかつたことを自認する趣旨とは到底解することはできない。とすれば、原判決が、上告人は右土地の引渡を受けなかつたことは上告人の主張自体から明らかであると判示したのは上告人の右主張の趣旨を正解せず、かつその点に関する審理不尽の違法あるものと言わなければならない。そうしてこの違法は、原判決の事実認定に影響し、引いてはその主文にも影響を及ぼすべきは勿論であるから、この点に関する本件上告は理由あり右土地につき上告人の請求を排斥した原判決の部分は破棄を免れない。その他の部分については、原判決の判断につき上告人において何等その違法を主張するところがないから上告は理由なしとしてこれを棄却すべきものとする。

よつて、民訴四〇七条、三九六条、三八四条により裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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